多自由度システム情報論講座

コロキウムは、(2019年度は)原則として、火曜15時から、情報学研究科棟 の8階セミナー室(802号室)で行います。

第1回

ラーニングアナリティクスから見えるテスト結果の確率的変動と教員の学生評価バイアス:広島工大での実例から

要旨:

今日の大学,特に私立大では,入学時に多様な習熟度の学生を受け入れながらも,卒業時には共通のディプロマポリシーに沿うように育成することがミッションとなっている.このため,個々の学生の習熟度に応じた種々の教育法や教育内容が必要となり,リメディアル授業,授業相談室,習熟度別クラス編成,補習授業の設置など多種多様な工夫がなされている.一方で教育スタッフ資源は年々厳しくなる傾向にあるため,その中での効果的な仕組みが望まれている.例えば,MoodleなどのLMSはラーニングのシステム化の一つであると考えられ,教材のオンライン提供や電子出席確認など効率化をもたらしている.しかし,多様な習熟度に応じた指導効果を上げるには,授業の進度にともなって刻々変化する学生の理解度を捉えられるような定期的なモニタリング情報など,ラーニングについてのデータの量と質を一層確保することが望ましい.オンラインテスティングはそれを実現させる一つの方法であり,ラーニングアナリティクスを可能にするツールである.つまり,オンラインテスティングを導入すれば,個別の詳細な指導資料が得られるのはもちろんであるが,データを蓄積することによって得られる波及効果に期待をかけることができる.例えば,大規模なテスティング結果からのアセスメント実績を蓄積し,それを統計的に分析すれば,過去との比較だけでなく,そこから将来の教育方法論の方向性を示唆できる可能性が産まれてくる.

広島工大では,このようなラーニングシステムとして,全新入生対象の大規模オンラインテスティングプログラムを2016年度から開始した.それは,LCT (learning check testing),CWT (collaborative work testing),FPT (follow-up program testing)の3つのオンラインテスティングから構成されている.数学基礎科目について,全学生に毎授業時間にオンラインテストLCTを行い,それにより授業の理解度が不十分な学生を選別し,彼らに対して毎週1回の補習クラスを設け,そこでは学生の習熟度に応じたアダプティブテストによる演習CWTと確認テストFPTを課すというプログラムである.

ここでは,過去3年間に蓄積されたラーニングデータをもとにして,まず,ドロップアウトの危険性を持つ学生を特定できるかどうかということについて機械学習法を使った分析結果,例えば,セメスターの1/3くらいの早い段階で,期末試験に失敗しそうな学生を一定の確率で特定できることを示す.また,同一内容を複数のクラスに分割して授業を行ったときの,テスト結果の確率的変動とクラス担当教員による学生の習熟度評価のバイアスについて述べる.分析には,項目反応理論による解析も用いられている.

参考文献:

  1. 廣瀬 : 大規模授業支援テスティングシステムとそのラーニングアナリティクス, 統計数理, 66, 1, 79-96, 2018.
  2. 廣瀬: ラーニングアナリティクス指向学習支援, コンピュータ&エデュケーション, 45, 23-30, 2018.
  3. J. Hung, B.E. Shelton, J.Yang, and X. Du, Improving Predictive Modeling for At-Risk Student Identification: A Multistage Approach, IEEE Transactions on Learning Technologies, 12, 2, 148-157, 2019.
  4. M. Liz-Dominguez, M. Caeiro-Rodriguez, M. Llamas-Nistal, and F. Mikic-Fonte, Predictors and Early Warning Systems in Higher Education - A Systematic Literature Review, Learning Analytics Summer Institute Spain 2019: Learning Analytics in Higher Education, 84-99, 2019.

第2回

Geometry, Mechanics, and Control in Action for the Falling Cat

要旨:

猫の宙返りの要諦は、多粒子系の全角運動量ゼロの条件を深く理解するところにある。そのためには、空間の回転対称性に由来する多粒子系のバンドル構造をとらえて、接続の理論を援用し、さらにそれを基に力学系を記述することが肝要である。多粒子系から剛体系の力学に拡張することにより、全角運動量ゼロの条件を上手く取り込んで、猫のモデルが出来上がる。制御入力を上手く設計して、猫の力学系モデルに宙返りをさせるには、制御入力が力学系を整形する役割をはたすという視点が役に立つ。

参考文献: 岩井敏洋セミナーノート