研究内容

個々のものは単純な働きしかしなくて単純な式で記述できるのに、数が増えるとその全体は非常に複雑な振る舞いをする、そういうものがこの世界にはたくさんあります。複雑系科学の創始者のひとりである,ノーベル物理学賞受賞者のP. W. アンダーソンは,「量は質を変える(“More is different”)」という複雑系の本質を見事に表現した有名な言葉を残しています.生態系、細胞内の代謝系、免疫系、生体高分子、神経回路網(ニューラルネットワークや深層学習など)、組み合わせ最適化問題、情報システム、経済システム、社会システムなどがその例です。それらの複雑系を、非線形力学、統計物理学、計算物理学などの手法を用いて数理的に理解し、制御するための方法を研究しています。これらは一見全く異なる研究分野の問題なのですが、比較的単純なものが多数集まり、複雑な相互作用で影響しあうことにより創発するマクロな現象という点で数理的に密接な関係があります。これらを統一的な視点で眺めることにより逆に個々の理解が深まるという場合が少なくありません。アリの研究や,社会生物学の創始者としても有名な,進化生物学者E. O. ウィルソンは,複雑系科学を通じた様々な分野の知の統合を「コンシリエンス」と呼んでいます.数学や物理の解析的なアプローチからスーパーコンピューターやGPUを用いた大規模シミュレーションまで、様々な手法を駆使して新しい研究領域を開拓しようとしています。

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